トラッププリセット

トラッププリセットパネルの概要

トラッププリセットは、ドキュメントのページまたはページ範囲に適用するトラップ設定の組み合わせです。トラッププリセットパネルには、トラップ設定をおこない、トラッププリセットを保存するためのインターフェイスが用意されています。現在のドキュメントに対して任意のページまたはすべてのページにトラッププリセットを適用したり、別の InDesign ドキュメントからプリセットを読み込むことができます。トラッププリセットをトラップするページ範囲に適用しなければ、「デフォルト」トラッププリセットがそのページ範囲に使用されます。

トラッププリセットの設定の表示

  1. トラッププリセットパネルが表示されていない場合は、ウィンドウ/出力/トラッププリセットを選択します。
  2. トラッププリセットパネルで、次のいずれかの操作をおこないます。
    • プリセットをダブルクリックします。

    • プリセットを選択して、パネルメニューから「トラッププリセットを編集」を選択します。

トラッププリセットリストの縮小表示

  1. トラッププリセットパネルメニューから「小さく表示」を選択します。

未使用のトラッププリセットの確認

  1. トラッププリセットパネルメニューから「未使用プリセットをすべて選択」を選択します。現在のドキュメントに割り当てられていないすべてのプリセット(「デフォルト」と「トラッププリセットなし」を除く)がハイライト表示されます。不要なプリセットを削除する場合に便利です。

トラッププリセットの作成または編集

  1. トラッププリセットパネルが表示されていない場合は、ウィンドウ/出力/トラッププリセットを選択します。
  2. トラッププリセットパネルメニューから「新規トラッププリセット」を選択するか、編集するプリセットをダブルクリックします。
    注意:

    トラッププリセットパネルの下部にある「新規トラッププリセットを作成」ボタンをクリックすると、「デフォルト」トラッププリセットの設定に基づいてプリセットが作成されます。

  3. 次のオプションを指定して、「OK」をクリックします。

    名前

    プリセット名を入力します。「デフォルト」トラッププリセットの名前は変更できません。

    トラップの幅

    インキの重なっている量を入力します。

    トラップの外観

    トラップの形状を設定します。

    画像

    読み込んだビットマップ画像をトラップする方法を指定します。

    トラップのしきい値

    トラップ処理が実行される条件を指定します。多くの要因がここに入力する必要がある値に影響を与えます。詳しくは、印刷・出力会社に相談してください。

トラッププリセットの管理

トラッププリセットを複製、削除、読み込みおよびカスタマイズすることができます。

トラッププリセットの複製

  1. 次のいずれかの操作をおこないます。
    • トラッププリセットパネルでプリセットを選択し、パネルメニューから「トラッププリセットを複製」を選択します。

    • 複製するプリセットをパネルの下部にある「新規トラッププリセットを作成」ボタンまでドラッグします。

トラッププリセットの削除

  1. トラッププリセットパネルでプリセットを選択し、次のいずれかの操作をおこないます。
    • 「削除」ボタンをクリックします。

    • パネルメニューから「トラッププリセットを削除」を選択します。

  2. トラッププリセットを置き換えるかどうか確認するメッセージが表示されたら、トラッププリセットを削除ダイアログボックスで置き換えるトラッププリセットを選択します。このダイアログボックスは、選択したプリセットが少なくとも 1 ページに割り当てられている場合に表示されます。
  3. 「はい」をクリックして削除を確認します。
注意:

2 つの組み込みプリセット([デフォルト] と [トラッププリセットなし])を削除することはできません。

他の InDesign ドキュメントからのプリセットの読み込み

  1. トラッププリセットパネルメニューから「トラッププリセットを読み込み」を選択します。
  2. InDesign ファイルを選択して、「開く」をクリックします。

トラッププリセットのページへの割り当て

トラッププリセットは、ドキュメントまたはページ範囲に割り当てることができます。隣接するカラーがないページは、それらのページへのトラップを無効にすれば、より速く印刷されます。トラップは、ドキュメントが印刷されるまで実行されません。

プリセットを適用したページがリストボックスに表示されるトラップの割り当ては「割り当て」ボタンをクリックするたびに更新される

  1. トラッププリセットパネルメニューから「トラッププリセットを割り当て」を選択します。
  2. トラッププリセットポップアップメニューから、適用するプリセットを選択します。
  3. トラッププリセットを適用するページを選択します。
  4. 「割り当て」ボタンをクリックして、「終了」ボタンをクリックします。
注意:

「割り当て」ボタンをクリックせずに「終了」をクリックすると、トラップの割り当てが変更されることなくダイアログボックスが閉じます。それまでに「割り当て」ボタンで設定したトラップの割り当ては保存されます。

トラップするページ範囲の設定

  1. トラッププリセットパネルメニューから「トラッププリセットを割り当て」を選択します。
  2. トラッププリセットポップアップメニューから、ページ範囲に適用するプリセットを選択します。
  3. 「範囲」を選択して、右のテキストボックスに 1 つまたは複数のページ範囲を入力します。範囲を指定するにはハイフンを使い、ページや範囲を複数指定するにはそれぞれをコンマで区切ります。例えば、「2-4, 6, 9-10, 12-」というように指定します。
  4. 「割り当て」ボタンをクリックして、「終了」ボタンをクリックします。

トラップするページ範囲を無効にするには、パネルメニューから「トラッププリセットを割り当て」を選択して、トラッププリセットポップアップメニューから「トラッププリセットなし」を選択します。「割り当て」ボタンをクリックして、「終了」ボタンをクリックします。

トラッププリセットのオプション

トラッププリセットを作成したり、編集したりするときはいつでも、トラッププリセットオプションを変更できます。トラッププリセットオプションは Acrobat と InDesign で同じ設定を使用できます。Acrobat でトラッププリセットを表示するには、ツール/印刷工程/トラッププリセットを選択します。InDesign では、ウィンドウ/出力/トラッププリセットを選択します。

トラップの幅

トラップの幅は、各トラップが重なり合う部分の量です。用紙の特性、スクリーン線数、印刷機の状態によって、必要なトラップ幅は異なります。それぞれのジョブに適切なトラップ幅を決定するには、印刷・出力会社と相談してください。

デフォルト

黒ベタを除くすべてのカラーをトラップするトラップ幅を指定します。デフォルト値は 0.088 mm です。

インキが黒ベタに広がっていく距離またはリッチブラックをトラップする黒のエッジとその下にあるインキの距離であるホールドバック量を示します。デフォルト値は 0.176 mm です。多くの場合、この値はデフォルトのトラップ幅の 1.5 ~ 2 倍の値に設定されます。

InDesign では、「ブラックカラーリミット」で設定した値によって、黒ベタまたはリッチブラック(プロセスカラーのブラック(K)にカラーインキを混合してインキの濃度を上げたもの)の値が決まります。

注意:

(InDesign)組み込みトラップを選択した場合、デフォルトのトラップ幅または 4 ポイント以上の対ブラックを指定すると、トラップ幅は 4 ポイントに設定されます。ただし、指定した値は継続して表示されます。これは、Adobe In-RIP トラップに切り替えると、指定したとおり 4 ポイント以上のトラップが適用されるためです。

トラップの外観

結合とは、2 つのトラップのエッジが共通の端点において交差する場所のことです。2 つのトラップ線分が結合する外側の形状と、3 つのトラップが交差する部分を制御することができます。

結合スタイル

2 つのトラップ線分の外側にある結合の形状を制御します。「角」、「丸み」、「斜角」から選択します。デフォルトは「角」で、Adobe In-RIP トラップエンジンの以前のバージョンとの互換性を維持しています。

トラップの結合例、左から右に:角結合、丸み結合、斜角結合

端のスタイル

3 つのトラップの交差を制御します。「角」(デフォルト)は、交差しているオブジェクトにトラップの端を近付けないように変形します。「オーバーラップ」は、複数の暗いオブジェクトと交差する、最も明るい ND 値のオブジェクトによって生成されたトラップの形状に作用します。最も明るいトラップの端は、3 つのオブジェクトが交差するポイントに回り込みます。

トラップの端の拡大例:角(左)およびオーバーラップ(右)

トラップのしきい値

色差

カラー変化のしきい値を指定します。この値を超えると、トラップエンジンがトラップを作成します。印刷物によって、最も極端なカラー変化だけをトラップしたい場合もあれば、微妙なカラー変化もトラップしたい場合もあります。「色差」値は、隣接するカラーの成分(CMYK 値など)の変化の度数を示し、この値を超えるとトラップが生じます。

隣接するカラーがトラップされる前にそのコンポーネントインキが変化する量を変更するには、新規トラッププリセットダイアログボックスまたは「トラッププリセット」オプションを変更ダイアログボックスで値を増減します。デフォルトは 10 %です。最適な結果を得るには、8 ~ 20 %の値を使用します。値が低ければ低いほど、色差への感度が高くなり、結果としてより多くのトラップがおこなわれます。

ブラックカラーリミット

必要なブラックインキの最小量を示し、これを下回ると「対ブラック」テキストボックスの設定が適用されます。デフォルトは 100 %です。最適な結果を得るには、70 %以上の値を使用します。

ブラック濃度リミット

インキがブラックであると認識する ND 値またはそれ以上の ND 値を示します。例えば、「対ブラック」の設定で暗い特色インキを使用する場合、ここに ND 値を入力します。この値は通常、デフォルトの 1.6 近くに設定します。

トラップ限界のスライド

トラップエンジンがカラーの境界の中心線を越えてトラップをおこなう値を指定します。この値は、隣接する暗い方のカラーの ND 値に対する明るい方のカラーの ND 値の割合です。例えば、「トラップ限界のスライド」値を 70 %に設定した場合、明るい方のカラーが暗い方のカラーの ND 値の 70 %を超えると(つまり、明るい方のカラーの ND 値を暗い方のカラーの ND 値で割った結果が 0.70 より大きいと)、トラップの位置は中心線を超えます。ND 値が同一のカラーであれば、「トラップ限界のスライド」を 100 %に設定していない限り、トラップは必ず中心線上の位置になります。

トラップ減色

トラップカラーを減らすために、隣接するカラーから成分が使用される度数を示します。この設定は、ある特定の隣接するカラー(例えばパステルカラー)にどちらのカラーよりも暗いトラップが作成されることを防ぐのに便利です。値を 100 %より小さく指定すると、トラップのカラーは明るくなります。値を 0 %にすると、トラップの ND 値は暗いカラーの ND 値と同じになります。

読み込まれたグラフィックのトラップ

トラッププリセットは、画像内のトラップを制御するだけでなく、ビットマップ画像(写真画像や写真画像が含まれているラスタ PDF ファイルなど)とベクターオブジェクト(ドローアプリケーションで作成されたオブジェクトやベクター PDF ファイルなど)間のトラップを制御することもできます。読み込まれたグラフィックの処理は、トラップエンジンによって異なります。トラップオプションを設定する場合は、これらの相違を理解しておくことが重要です。

トラップ配置

ベクターオブジェクト(InDesign で作成したオブジェクトを含む)をビットマップ画像にトラップするときのトラップの位置を設定するオプションです。「ND 値」以外のすべてのオプションでは、オブジェクトに対して一定のエッジが作成されます。「中央」を選択すると、オブジェクトと画像間のエッジをまたぐトラップが作成されます。「チョーク」を選択すると、オブジェクトは隣接する画像に重なります。「ND 値」は、ドキュメントの別の箇所で使用されているトラップと同じトラップルールを適用します。「ND 値」が設定されている写真画像にオブジェクトをトラップすると、トラップが一方のエッジからもう一方のエッジに移動したときに、凹凸が非常に目立つエッジになることがあります。「スプレッド」を選択すると、ビットマップ画像が隣接するオブジェクトに重なります。

オブジェクトを画像にトラップ

「トラップ配置」の設定を使用して、ベクターオブジェクト(主線として使用するフレームなど)を画像にトラップします。ベクターオブジェクトが、トラップされるページ範囲内の画像に重ならない場合は、このオプションをオフにすることによって、そのページ範囲のトラップの速度が向上します。

画像間でトラップ

ビットマップ画像が重なっているか、隣接している場合、ビットマップ画像の境界線に沿ったトラップを有効にします。この機能はデフォルトで設定されます。

内側の画像をトラップ

個々のビットマップ画像内で、カラー同士のトラップを有効にします(ベクターオブジェクトやテキストに接触する部分に限りません)。このオプションは、スクリーンショットや漫画など、コントラストの強い画像を含むページ範囲にだけ使用します。不自然なトラップが作成されないよう、連続階調や複雑な画像ではこのオプションを選択しないでください。このオプションの選択が解除されていると、より速くトラップが実行されます。

1 ビット画像をトラップ

隣接するオブジェクトに 1 ビット画像をトラップします。1 ビット画像は 1 つのカラーしか使用しないので、このオプションは「トラップ配置」の設定を使用しません。通常、このオプションは選択しておきます。場合によっては、ピクセルの間隔が空いている 1 ビット画像などでは、このオプションを選択すると画像が暗くなり、トラップの速度が低下することがあります。

トラップ限界のスライドの設定

  1. トラッププリセットパネルメニューから「新規トラッププリセット」を選択するか、編集するプリセットをダブルクリックします。
  2. 「トラップ限界のスライド」で、0 ~ 100 のパーセント値を入力するか、デフォルトの 70 %を使用します。0 %では、すべてのトラップのデフォルトが中心線上の位置になります。100 %では、トラップ限界のスライドがオフになり、隣接するカラー同士の ND 値に関係なく、強制的に一方のカラーがもう一方の全体に広がります。

黒のトラップについて

プリセットを作成したり、編集したりするときは、「ブラックカラーリミット」に入力した値によって、黒ベタおよびリッチブラックと見なされる値が決まります。リッチブラックとは、サポートスクリーン(黒を強調するために 1 色以上のプロセスインキを数パーセント追加した黒)を使用する黒のカラーのことを指します。

「ブラックカラーリミット」の設定は、過度のドットゲイン(低品質な用紙を使用しているような場合)を補正するときに便利です。このような状況では、黒の値が 100 %未満でも、ベタとして印刷されます。黒またはリッチブラックをスクリーンバック(黒ベタの濃淡を使用)し、「ブラックカラーリミット」の設定をデフォルトの 100 %よりも小さくすることによって、ドットゲインを補正することができます。これにより、トラップエンジンは適切なトラップ幅と黒いオブジェクトへの配置を適用します。

カラーが「ブラックカラーリミット」の値に達すると、「対ブラック」の値が隣接するすべてのカラーに適用され、「対ブラック」の値を使用してキープアウェイトラップがリッチブラックの領域に適用されます。

サポートスクリーンが黒い部分のエッジに広がると、版ズレによってサポートスクリーンのエッジが見えるようになり、不必要なハローが発生したり、オブジェクトのエッジが歪んだりすることがあります。トラップエンジンは、リッチブラックに対してキープアウェイまたはホールドバックを使用し、サポートスクリーンを反転オブジェクトまたは前面の明るいオブジェクトのエッジから所定の距離に維持することで、明るいオブジェクトが鮮明度を保つようにします。サポートスクリーンと黒い部分のエッジとの間の距離は、「対ブラック」の値を設定することによって制御します。

注意:

トラップするオブジェクトがグラフィックを囲む黒の主線などの細いオブジェクトの場合、トラップエンジンは「対ブラック」の設定を無効にし、トラップ量を細いオブジェクトの幅の半分に制限します。

ブラックに隣接するカラーのトラップ幅の設定

  1. トラッププリセットパネルメニューから「新規トラッププリセット」を選択するか、編集するプリセットをダブルクリックします。
  2. 「トラップの幅」セクションの「対ブラック」で、他のカラーをブラックの方向に広げる距離、またはサポートスクリーンをブラックの下にチョークバックする距離を入力します(単位はミリメートル)。通常、「対ブラック」は、トラップ幅のデフォルト値の 1.5 ~ 2 倍に設定します。
  3. 「ブラックカラーリミット」と「ブラック濃度リミット」の値を設定します。
注意:

ブラックのトラップ機能を適用するには、カラー部分で「ブラック濃度リミット」以上の ND 値のインキを使用し、「ブラックカラーリミット」以上のパーセンテージでインキが発生する必要があります。

矛盾するトラッププリセットでのブックの印刷

1 ページだけの出力のような 1 枚の出力に対して、1 つのトラッププリセットを適用することができます。通常はこのような使い方はしませんが、ブックで複数のドキュメントを印刷する場合や、個々のドキュメントまたはページが異なったトラッププリセットを持っている場合、InDesign がドキュメント間でプリセットを同期させることによって、トラッププリセットが矛盾することを解決することができます。

  • ブック内の複数のドキュメントが同じ名前の異なるトラッププリセットを使用する場合、同期オプションダイアログボックスで「トラッププリセット」オプションを選択していれば、InDesign はマスタードキュメントで使用されているトラッププリセットを割り当てます。

  • ドキュメントの同期では、マスタードキュメントのすべてのプリセットがブック内の他のドキュメントで使用可能になりますが、プリセットがドキュメントに割り当てられているわけではありません。それぞれのドキュメントにトラッププリセットを割り当てるか、「デフォルト」トラッププリセットを使用する必要があります。使用可能なプリセットは、ドキュメント上で表示したトラッププリセットを割り当てダイアログボックスのトラッププリセットポップアップメニューに表示されます。

注意:

異なるトラッププリセットが見開きページに適用されている場合、InDesign はそれぞれのトラッププリセットを優先します。

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